10年勤めた小さなデザイン事務所、そして社長の言葉

キム・ミレさんは、2008年の設立当初から、ソウル市内にある小さなデザイン事務所で働いてきました。社員はミレさんを含めてわずか3人。家族経営のような温かい雰囲気の中で、彼女は10年以上、会社の成長を支えてきました。しかし、キャリアアップのために転職を決意し、長年勤めた感謝を伝えつつ、パク社長に退職金について切り出したとき、返ってきたのは意外な言葉でした。

「ミレさん、うちはずっと従業員が5人未満の小さな会社だろう?韓国の法律では、5人未満の会社には退職金を支払う義務はないんだよ。気持ちはわかるけど、規則だから仕方ないんだ。」

長年信頼してきた社長の言葉に、ミレさんは戸惑いました。「小さな会社で働くということは、退職金さえ諦めなければならないということなのだろうか?」彼女の頭の中には、これまでの献身的な努力が否定されたような寂しさと、法的な疑問が渦巻きました。

5人未満の事業所でも退職金は請求できるのか?

今回のケースにおける核心的な問いは、「常時労働者が5人未満の小規模事業所において、退職金制度は法的に適用されるのか」、そして「過去に遡ってすべての期間の退職金を受け取れるのか」という点です。

韓国の法律が定める退職金の適用範囲

韓国の「勤労者退職給付保障法」は、労働者の安定した生活を守るために、事業所の規模に関わらず退職金を支給することを原則としています。

勤労者退職給付保障法 第3条この法律は、労働者を使用するすべての事業または事業所に適用する。

かつては確かに「5人以上の事業所」のみが対象でしたが、法改正によりその範囲は段階的に拡大されました。重要なポイントは以下の通りです:

  • 2010年12月1日以降:常時1人以上の労働者を使用するすべての事業所に退職金制度が適用されるようになりました。
  • 経過措置:ただし、5人未満の事業所については、雇用主の負担を考慮し、2010年12月1日から段階的に導入されました。

韓国裁判所と法解釈の視点

韓国の司法当局および雇用労働部は、労働者の権利保護を最優先に考えます。たとえ雇用主が「法を知らなかった」あるいは「以前の慣習に従った」と主張しても、法律が施行された以上、それを遵守しないことは賃金未払いと同等の違法行為とみなされます。

特に、事業所の規模を判断する「常時労働者数」の計算において、雇用主が意図的に人数を少なく見せかけようとする行為に対しても、裁判所は実態に基づいた厳格な判断を下す傾向にあります。

キム・ミレさんのケースへの法適用

ミレさんの状況を整理してみましょう。彼女は2008年5月から働いていますが、事務所は一貫して5人未満でした。

  1. 適用の有無: 法律により、2010年12月1日からは5人未満の事業所にも退職金制度が適用されています。したがって、パク社長の「5人未満だから支払う義務がない」という主張は法的に誤りです。
  2. 算定期間の注意点: ここで重要になるのが「いつからの期間が対象か」という点です。ミレさんは2008年から働いていますが、5人未満の事業所に法的な義務が生じたのは2010年12月1日からです。そのため、それ以前の期間については、会社側が独自に退職金規定を設けていない限り、法的な強制力を持たせることは難しいのが実情です。
  3. 支給額の変動: また、2010年12月1日から2012年12月31日までの期間については、法改正の初期段階として、通常の50%の退職金のみを支払えばよいという特例がありました。2013年1月1日以降の期間については、100%の退職金が発生します。

結論:ミレさんが取るべき行動と読者へのアドバイス

結論として、キム・ミレさんは退職金を受け取ることができます。 パク社長に対し、2010年12月1日以降の勤務期間に基づいた退職金の計算を正当に要求すべきです。社長が拒む場合は、雇用労働部への申告を通じて解決を図ることが可能です。

同じような境遇にいる方々へ、以下の2つのアドバイスを贈ります。

  • 入社日と労働者数の推移を記録しておく: 退職金の計算には正確な入社日と、その期間中の事業所規模(5人以上か未満か)が重要になります。契約書や給与明細は必ず保管しておきましょう。
  • 「5人未満だから対象外」という言葉を鵜呑みにしない: 法改正により、現在はほぼすべての労働者に退職金の権利があります。疑問を感じたら、まずは専門家や公的な相談窓口(雇用労働部など)に確認することをお勧めします。

正当な労働の対価は、会社の規模に関わらず守られるべき大切な権利なのです。

** *本コラムは一般的な法情報の提供を目的としており、個別の事案に対する法的助言に代わるものではありません。具体的な問題については、必ず法律の専門家にご相談ください。