1. 翻弄されたある会社員の物語
中堅物流企業で5年間勤務してきた金知勲(キム・ジフン)さんは、ある日突然、会社から「3ヶ月の出勤停止」という重い懲戒処分を言い渡されました。理由は、報告書の数値ミスによって会社に損失を与えたというものでした。しかし、金さんは納得できませんでした。ミスは確かにありましたが、それはシステム上の欠陥も一因であり、何より懲戒委員会が開かれる際に、自分に弁明の機会が一度も与えられなかったからです。
金さんはこの処分を不当とし、労働委員会に救済を申し立てました。ところが、労働委員会の審理が進んでいたある日、会社側から驚くべき連絡が入ります。「以前の出勤停止処分を会社側で自主的に取り消す」という内容でした。金さんは「ようやく非を認めたのか」と胸をなでおろしました。しかし、その安堵感は長くは続きませんでした。
処分が取り消されたわずか1週間後、会社は再び金さんを呼び出しました。そこには「懲戒委員会の開催通知」がありました。前回と同じ理由で、今度は「適切な手続きを踏んで」再び懲戒を下すというのです。金さんは憤りを感じました。「一度下した処分を会社が勝手に取り消して、また同じ理由でやり直すなんて、二重処罰ではないのか?」と。
2. この事案が提起する法的な問い
このケースにおける核心的な問いは、「使用者が自ら行った懲戒処分を自主的に取り消した後、同一の事由で再び懲戒処分を下すことが法的に許されるのか」という点です。これは労働者にとっては「いつまでも処分の不安が消えない」という問題であり、使用者にとっては「間違いを正す機会」という側面を持ちます。
3. 韓国の法律は何と定めているか
韓国の労働基準法第23条第1項は、使用者が正当な理由なく労働者を懲戒することを禁じています。しかし、会社が自らミスに気づいて処分を修正することについては、最高裁判所の判例(大法院2009.5.14.宣告2009タ97611判決など)によって指針が示されています。
「使用者は、懲戒手続きの瑕疵、懲戒事由の存否、懲戒の量定などに誤りがあることを自ら認めたときには、労働委員会の救済命令や裁判所の無効確認判決を待つことなく、自ら懲戒処分を取り消すことができ、さらに新たに適法な懲戒処分をすることも可能である。」
この原則には、以下の要素が含まれています:
- 自主的取消の権利: 外部の公的機関による強制を待たず、使用者が自ら誤りを正すことができます。
- 手続きの瑕疵修正: 手続きに不備があった場合、それを取り消して正しい手順でやり直すことができます。
- 一事不再理の例外: 同一事由であっても、前の処分が無効として取り消されたのであれば、再度の処分は二重処罰には当たらないと解釈されます。
4. 韓国裁判所のアプローチ
韓国の裁判所は、企業の懲戒権を「企業秩序を維持するための経営上の固有権限」と見ています。そのため、一度下した処分に法的欠陥(例えば、弁明の機会を与えなかったなど)がある場合、その欠陥を放置するよりも、会社が自ら取り消して適法にやり直す方が、最終的な法的安定性に寄与すると判断します。
ただし、これは「無限にやり直せる」という意味ではありません。再処分を行う際にも、労働基準法が定める「正当な理由」と「適正な手続き」を厳格に守らなければなりません。
5. 法理の金知勲さんへの適用
金さんのケースを分析してみましょう。会社が最初に行った「出勤停止3ヶ月」は、金さんに弁明の機会を与えなかったという点で、重大な手続き上の瑕疵がありました。そのまま労働委員会の判定を待てば、十中八九「不当懲戒」と判断されたでしょう。
会社はこの敗訴リスクを回避するために、自ら処分を取り消しました。韓国の法理によれば、この「自主的取消」自体は合法です。そして、取り消されたことによって以前の処分は遡って無効となるため、同じミスを理由に「正しい手続き(今度は金さんに弁明の機会を与えるなど)」を踏んで再度懲戒を行うことも、原則として認められます。
しかし、再処分の内容が前回と同じ「出勤停止3ヶ月」が妥当かどうかは別の問題です。もし金さんのミスに対してその処分が重すぎる(懲戒権の濫用)と判断されれば、たとえ手続きが正しくても、その再処分も不当とされる可能性があります。
6. 結論:金さんはどうなり、我々は何をすべきか?
金さんの場合、会社による懲戒の「やり直し」自体を止めることは困難です。しかし、会社が再処分を行う際に開いた懲戒委員会で、金さんは自身の過失だけでなくシステムの欠陥を十分に主張しました。その結果、再処分は「減給1ヶ月」へと軽減されました。会社側も、一度目の不備を認めた手前、より慎重な判断を下さざるを得なかったのです。
もし、皆さんが同様の状況に直面した場合は、以下の点に注意してください:
- 取消の理由を確認する: 会社がなぜ処分を取り消したのか、書面で確認しましょう。手続きのミスを認めたのか、それとも事由そのものを否定したのかで、次の対策が変わります。
- 再処分の手続きを厳密に監視する: 再度の懲戒委員会が開かれる際は、就業規則に基づいた適正な手続き(通知期間の遵守、弁明の機会の提供など)が行われているか細かくチェックしてください。
- 専門家のアドバイスを受ける: 「一度取り消されたから終わり」と油断せず、再処分が予想される場合は、早い段階で弁護士や公認労務士に相談し、主張の論理を整理しておくことが重要です。
韓国の労働法は、企業の自律的な修正を認めつつも、その過程が労働者の権利を侵害しないよう厳格に監視しています。
本コンテンツは一般的な情報提供を目的としており、具体的な法的助言に代わるものではありません。個別の事案については、必ず専門家にご相談ください。




















