セクション 1 — ある熟練工の決断と予期せぬ誤算

韓国中部の工業団地にある自動車部品メーカーに15年間勤務してきたカン・ミンホさんは、現場のリーダーとして信頼の厚い職人でした。しかし昨年の冬、労働組合が会社側との賃金交渉で決裂し、全面的なストライキに突入しました。カンさんも組合員としてこれに参加し、約2ヶ月間、生産ラインを離れて正門前での集会に加わりました。

ところが、このストライキは労働委員会による調整手続きを十分に経ていない「抜き打ち」の状態で行われたものでした。後に裁判所から手続き上の不備を指摘され、「違法な争議行為」と判断されることになります。ストライキが終わって職場に戻ったカンさんでしたが、長引く不況と家庭の事情が重なり、この機会に早期退職制度を利用して自分の店を持つことを決意しました。

「15年も働いたのだから、それなりの退職金が出るはずだ」と期待していたカンさん。しかし、手渡された退職金の見積額を見て、彼は自分の目を疑いました。想定していた金額よりも、数百万円(数千万ウォン)単位で少なかったのです。人事担当者はこう告げました。「ストライキ期間中の給与がゼロだったことが、平均賃金の計算にそのまま反映されています。」

セクション 2 — 法的な争点:違法ストライキ期間の取り扱い

このケースにおける核心的な問いは、「退職金の算出基準となる『平均賃金』を計算する際、違法な争議行為(ストライキ)の期間を計算期間から除外できるのか」という点です。

韓国の法律では、労働者が自身の責任ではない理由や、正当な権利行使によって不利益を被らないよう、特定の期間を計算から外す仕組みがあります。もしカンさんのストライキ期間がこの「除外期間」に含まれれば、退職金は減りません。しかし、含まれなければ、給与が0円だった期間が平均値(分母)に含まれてしまい、結果として退職金が激減することになります。

セクション 3 — 韓国の法律は何と定めているか

韓国の「労働基準法施行規則」第2条第1項では、平均賃金の計算期間(通常は退職前3ヶ月間)から除外すべき期間をいくつか挙げています。

労働基準法施行規則 第2条 第1項(抄訳)平均賃金の計算期間中に次の各号のいずれかに該当する期間がある場合、その期間と、その期間中に支払われた賃金は、平均賃金の計算基準となる期間および総額からそれぞれ控除する。6. 「労働組合および労働関係調整法」第2条第6号の規定による争議行為の期間

これに加えて、業務上の負傷による休業期間や、産前産後休業、育児休業なども同様に除外されます。これは、労働者が働けなかった「特別な事情」がある場合に、本来もらえるはずの賃金を平均値として保護するための規定です。

セクション 4 — 韓国裁判所の判断基準

韓国の大法院(最高裁判所に相当)は、この「争議行為の期間」の解釈について、非常に明確な一線を画しています。

裁判所は、この規定の趣旨を「労働者の正当な権利行使を保護し、不利益を防ぐための特別な配慮」であると解釈しています。したがって、ここでいう「争議行為」とは、以下の要件をすべて満たした「正当な争議行為」のみを指すと判断しています。

  • 主体: 団体交渉の権限を持つ労働組合が行うこと
  • 目的: 労働条件の維持・改善のためであること
  • 手続き: 組合員投票や調整手続きなどの法的ステップを踏むこと
  • 手段・方法: 暴力の行使などを伴わず、公正な方法で行うこと

大法院は、これらの要件を欠いた「違法な争議行為」については、法律による特別な保護(平均賃金計算からの除外)を与える必要はないという立場を貫いています。

セクション 5 — カンさんのケースへの適用

カンさんの状況を詳しく見てみましょう。彼が参加したストライキは、法的に必要な調整手続きを無視した「違法な争議行為」でした。

  1. 計算期間の算入: カンさんが退職する直前の3ヶ月間のうち、2ヶ月間がストライキ期間でした。法的にはこの期間は「除外対象」とは認められません。
  2. 平均賃金の低下: 平均賃金は「3ヶ月間の総賃金 ÷ 3ヶ月間の総日数」で計算されます。カンさんの場合、分子となる「総賃金」は1ヶ月分(ストライキ以外の期間)しかありませんが、分母となる「総日数」にはストライキの2ヶ月分もしっかりカウントされてしまいます。
  3. 退職金への影響: その結果、算出された平均賃金は通常の約3分の1程度にまで落ち込み、それをベースに計算される退職金も大幅に減額されることになったのです。

セクション 6 — 結論:カンさんの結末と読者へのアドバイス

結局、カン・ミンホさんは裁判を通じて争いましたが、裁判所は会社側の計算が妥当であると認めました。違法なストライキに参加したという事実が、退職後の第2の人生の資金計画を狂わせる結果となってしまったのです。

労働者の権利を守るためのストライキが、意図せずして自身の将来の権利(退職金)を損なうという皮肉な結果を招かないために、以下の点に注意が必要です。

  • ストライキの正当性を必ず確認する: 組合の指示であっても、その争議行為が法的な手続き(投票、調整など)を正しく踏んでいるかを確認することが、自身の財産を守ることにつながります。
  • 退職時期の慎重な検討: もしストライキ(特に正当性に疑いがあるもの)に参加した場合、その直後に退職すると平均賃金が極端に低くなるリスクがあります。勤務を再開し、通常の賃金を3ヶ月以上受け取った後に退職することを検討すべきです。
  • 法的アドバイスの活用: 争議行為への参加が自身の給与や退職金にどのような影響を及ぼすか不明な場合は、事前に専門家(労務士や弁護士)に相談することをお勧めします。

※ 本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の法的事案については専門家にご相談ください。