1 人間の物語――違憲審査を求めた佐藤さん
佐藤健一さんは、韓国で進行中の民事訴訟で、判決の結論を左右する法律の規定に疑問を抱いていました。「この法律が憲法に反するなら、裁判の前提そのものが変わるはずだ」。そう考えた佐藤さんは、担当裁判所に違憲法律審査を憲法裁判所へ付託するよう申し立てました。
裁判所は申立てを認め、憲法裁判所に審査を付託します。ところが、憲法裁判所は、その法律の合憲性を判断する前に、当該法律の合憲性が本来の裁判の結論に関係するとはいえないとして、付託を却下しました。佐藤さんは納得できません。「自分が申し立て、結果にも直接影響を受けるのに、決定をやり直してもらうことはできないのだろうか」。
2 法的な問い
裁判所に違憲法律審査の付託を申し立てた訴訟当事者は、憲法裁判所が付託を却下した場合、その決定に対して再審を申し立てられるのでしょうか。
3 韓国法が定める仕組み
韓国の違憲法律審査は、訴訟当事者が直接、憲法裁判所に審査を求める仕組みではありません。具体的な訴訟で適用される法律の合憲性に疑いがあり、その判断が訴訟の結論に関係する場合、裁判所が憲法裁判所に付託します。当事者は裁判所に付託を申し立てることができますが、憲法裁判所に付託する主体は裁判所です。
韓国憲法第107条第1項は、法律の合憲性が裁判の前提となる場合に、裁判所が憲法裁判所に審査を付託する仕組みを定めています。
憲法裁判所法第41条第1項も、裁判の前提となる法律の合憲性に疑いがあるとき、裁判所が憲法裁判所に審査を付託できることを定めています。
付託の前提となるのは、法律の合憲性が、当事者の訴訟の判断に実際に関係することです。憲法裁判所が「裁判の前提性がない」と判断した場合、法律が合憲か違憲かという本案の判断には進まず、付託を却下することがあります。
再審は、確定した判断を例外的にやり直すための特別な手続です。決定に不満があるというだけで誰でも申し立てられるものではなく、原則として、その判断を受けた事件の当事者であることが求められます。
違憲法律審査を付託するのは裁判所です。付託を求めた訴訟当事者が、そのことだけで憲法裁判所の審査事件の当事者になるわけではありません。
4 韓国の裁判所の考え方
韓国憲法裁判所は、違憲法律審査の付託を申し立てた人は、憲法裁判所での付託事件の当事者ではないと考えています。付託を行うのは裁判所であり、当事者はその判断を求めた人にとどまるからです。
再審は、事件の当事者に認められる特別な不服申立てです。そのため、付託を申し立てた人が憲法裁判所の決定に関心を持ち、結果から影響を受ける立場にあっても、それだけでは再審を申し立てる資格は生じません。
この考え方は、憲法裁判所の2004年9月23日決定(2003헌아61)にも示されています。同決定は、違憲法律審査の付託を申し立てた人には、付託に関する憲法裁判所の決定に対する再審を求める当事者適格がないとしました。
5 佐藤さんのケースに当てはめる
佐藤さんの立場を、順を追って整理してみましょう。
- 佐藤さんは、まず担当裁判所に付託を申し立てた。 これは本来の訴訟で法律の違憲性を問題にし、裁判所に憲法裁判所への付託を求める手続です。
- 付託を決めたのは裁判所だった。 佐藤さんの申立てが認められたとしても、憲法裁判所に審査を付託した主体は裁判所です。佐藤さん自身が付託事件の申立人、つまりその事件の当事者になったわけではありません。
- 憲法裁判所は、法律の合憲性ではなく、裁判の前提性を判断した。 却下の理由は、対象となる法律の合憲性が本来の訴訟の結論に関係しないという点です。これは、法律が合憲だと判断されたことを意味するものではありません。
- 佐藤さんには、付託事件の当事者として再審を求める資格がない。 決定によって自分の訴訟に影響が出るという事情だけでは、再審に必要な当事者適格を補うことはできません。
したがって、佐藤さんが憲法裁判所の却下決定に対して再審を申し立てても、当事者適格がないとして認められないことになります。大切なのは、却下決定が法律の合憲性を判断したものではないことと、それでも佐藤さん自身が再審で決定を争えるわけではないことを区別する点です。
6 結論――佐藤さんに何が起きたのか、読者が取るべき行動
佐藤さんは、憲法裁判所の却下決定に対する再審を申し立てることはできません。違憲審査を求めるきっかけを作ったのが佐藤さんでも、憲法裁判所での付託事件の当事者は、あくまで付託を行った裁判所だからです。却下決定は法律を合憲と判断したものではありませんが、そのことを理由に佐藤さんが再審を求められるわけでもありません。
同じような状況にある人は、次の点を確認してください。
- 本来の訴訟で利用できる手続を確認する。 判決への不服申立てなど、取れる手段は事件の段階や内容によって異なります。期限を含め、韓国法に詳しい専門家に早めに相談しましょう。
- 法律が訴訟の結論にどう関係するのかを具体化する。 違憲性を指摘するだけでなく、その法律が適用されることで判決の結論がどう変わり得るのかを整理することが重要です。
- 憲法裁判所の決定の意味を取り違えない。 「前提性がない」とする却下は、必ずしも合憲判断ではありません。ただし、決定への不満だけで再審ができるわけではないため、手続上の資格と期限を必ず確認してください。



















