1.一人の参加者に届いた略式命令

東京で働く韓国人の青木葵は、政府の政策に抗議するため、友人とソウルの集会に参加しました。主催者の呼びかけに応じてデモ行進に加わった葵は、やがて参加者たちとともに車道上にとどまり、車の流れが止まる光景を目にします。彼女にとって、それは政策への反対を示すための行動でした。

数週間後、葵に届いたのは、一般交通妨害罪などを理由とする略式命令でした。罰金を命じられた葵は正式裁判を求めます。審理を前に、彼女は疑問を抱きました。「『その他の方法で交通を妨害した』という言葉は曖昧すぎないか。集会に参加しただけで処罰できるなら、集会の自由が広く侵されるのではないか。」

2.この事件が投げかける法的な問い

中心となる問いは、韓国刑法第185条の一般交通妨害罪が、何を処罰するのか不明確なため憲法に反するのか、また、集会・デモの自由を不当に制限するのか、ということです。

3.韓国法が定めること

韓国刑法第185条は、道路・水路・橋を壊したり通行できない状態にしたりする行為のほか、「その他の方法」で交通を妨害する行為を処罰の対象としています。

刑法第185条の要点:道路、水路または橋を損壊・遮断するなどして交通を妨害した者は処罰される。

問題になりやすいのは、「その他の方法」という文言です。韓国憲法裁判所は、これを何でも含む無限定な言葉とは捉えませんでした。道路などを損壊・遮断する行為に準じて、意図的かつ直接に交通上の障害を生じさせる行為、または交通の安全を脅かす行為を意味すると解釈しました。

この解釈を前提に、憲法裁判所は同条が憲法上の次の原則に反しないと判断しています。

  • 明確性の原則:何が処罰されるのか、一般の人が法律の意味を理解できること。
  • 責任と刑罰の均衡(比例)の原則:行為の責任に見合わない過度な処罰を科さないこと。
  • 平等の原則:合理的な理由なく人を差別して扱わないこと。

もっとも、道路を使う集会であれば、交通への影響がすべて犯罪になるわけではありません。

集会の自由が保障される以上、社会通念上、国や第三者が受忍すべき範囲の交通上の影響であれば、社会相当性を欠く行為とはいえず、処罰の対象にならないことがあります。その範囲を超えたかどうかは、個別の事件で判断されます。

したがって、法律そのものが合憲かという問題と、特定の参加者の行動が犯罪に当たるかという問題は、分けて考えなければなりません。

4.韓国の裁判所はどう考えるか

韓国の憲法裁判所は、2010年3月25日の判断で、第185条について、明確性・比例性・平等の各原則に反しないとして合憲としました。特に「その他の方法」という文言は、意図的かつ直接の交通妨害や交通の安全への危険という範囲に限定して理解できるため、曖昧すぎるとはいえないとしました。

一方で、憲法裁判所は、集会に伴う交通上の支障がどこまで許容されるかについて、すべてを一律に決めたわけではありません。集会の目的、道路の使われ方、妨害の程度や続いた時間、参加者の行動などを踏まえ、個別に法を解釈・適用する問題だと位置づけています。

つまり、「道路で集会をした」という事実だけでは結論は出ません。集会の自由に伴って社会が受忍すべき影響なのか、それとも交通を意図的・直接に妨げる行為としてその限度を超えたのかが問われます。

5.葵のケースに法律を当てはめる

葵が正式裁判で主張できることは、大きく二つに分けられます。

  1. 法律自体が違憲か:第185条は曖昧で、集会の自由を過度に抑え込むのではないか。
  2. 自分の行為が犯罪に当たるか:葵が交通を意図的かつ直接に妨げたのか、その程度は集会に伴う受忍可能な範囲を超えていたのか。

第一の主張については、憲法裁判所がすでに第185条を合憲と判断しているため、条文そのものを違憲として退けるのは容易ではありません。「その他の方法」は、交通への影響が少しでもあれば処罰できるという意味ではなく、意図的・直接的な妨害や安全への危険に限って解釈されるからです。

第二の点では、集会の自由が重要な判断要素になります。葵が集会に参加したというだけで、交通妨害の故意や直接性が当然に認められるわけではありません。たとえば、通行への影響が一時的で、参加者の行動が平穏な集会の範囲にとどまっていたなら、処罰に当たるかは慎重に検討されるべきです。

しかし、この架空の事件では、参加者が車道全体を意図してふさぎ、車の通行が長時間止まり、葵もその状態を認識しながら道路上にとどまっていたことが確認された、とします。こうした事情が立証されれば、単に集会に伴う不便を生じさせたにとどまらず、交通を直接に妨害したと評価される可能性が高まります。集会の目的が政治的であることだけで、交通妨害の責任がなくなるわけではありません。

それでも、最終的な判断には、葵が実際に何をしたのか、妨害の規模や時間、危険の有無、現場での状況などの確認が必要です。法律が合憲であることは、参加者全員が有罪であることを意味しません。

6.結論――葵に何が起きたのか、同じ立場ならどうするか

この物語では、正式裁判所は第185条に対する違憲の主張を認めませんでした。さらに、葵が道路を長時間、意図的にふさぐ行為に加わったことが証拠で確認されたため、裁判所は集会に伴う受忍可能な影響の範囲を超えて交通を直接妨害したと判断し、処罰を維持しました。ただし、これはあくまで物語上の事実設定に基づく結論です。現実の事件では、参加したという一点だけでなく、各人の具体的な行動と現場の状況が問われます。

同じような状況に置かれたら、次の点を意識してください。

  • 自分の行動を記録する:現場の動画、写真、主催者の案内、警察とのやり取りなど、何をしたか・どの程度交通に影響したかを示す資料を保存しましょう。
  • 命令や通知を放置しない:略式命令を受けた場合は、期限や手続を確認し、正式裁判を求めるかを速やかに検討してください。
  • 事実関係を具体的に相談する:集会の自由が関わることだけで結論は決まりません。妨害の時間、場所、態様、自分の関与の程度を整理し、韓国の刑事手続に詳しい弁護士に相談しましょう。